LiqLOG_

お酒の感想や調べたことをチラ裏程度に

タンカレーとジンのお話


バーでジンを飲むときは大抵ソーダ割りにライムを絞ったリッキーかロックをお願いする。けれどこの日はなんとなく優しいものが飲みたくて水割りをオーダーし、出てきたのがタンカレーラングプール。これが結構美味しくて好みだったので、タンカレーとジンについて少し調べてみることにした。

タンカレージンとは?

タンカレージンは1830年にチャールズ・タンカレーがロンドンのブルームズベリー地区で初めて蒸留したのがその始まり。1868年にチャールズが亡くなると息子のチャールズ・ウォー・タンカレーが受け継ぎ、第二次世界大戦で大きな被害を被るまで操業を続けた。この時一つだけ生き残った蒸留器は「Old Tom」と呼ばれ、スコットランドのキャメロン・ブリッジというところに移設されて今でも使用されているそう。

1890年台のロンドンには多くのジン蒸留所があり非常に競争の激しい業界だったため、息子のチャールズ・ウォーは生き残りをかけてゴードンジンを持つゴードン&カンパニーとの合併を画策。これによりタンカレーゴードン&カンパニーが誕生した。この会社はその後スコッチウイスキー蒸留所の連合会社であるディスティラーズカンパニー社に合流。ディスティラーズカンパニー社がギネス社に買収されると今度はギネスがグランドメトロポリタン社と合併してディアジオとなり、今タンカレーディアジオが持つブランドの一つになっているらしい。ちなみに日本の代理店はキリンとディアジオ社の合弁会社であるキリン・ディアジオ社だそうです。

タンカレーロンドンドライジン20214月から出荷停止されているとのこと。

 

そもそもロンドン・ドライ・ジンって?

そもそもロンドン・ドライ・ジンの「ロンドン・ドライ」ってなんのことだっけ?と思って調べてみたらこっちも面白かった。

1830年前後のロンドンでは「オールド・トム・ジン」というものが主流だった。オールド・トム・ジンは純度の低いアルコールの雑味を緩和するために砂糖が加えられたものだったが、同じ頃に発明された連続式蒸留機(カラム式)によって純度の高いニュートラルスピリッツを効率よく取り出す技術が確立。これをジンに応用して生み出されたのがロンドン・ドライ・スタイルで、チャールズ・タンカレーはその後主流となったドライ・ジンを開発した最初の人物の一人とのこと。

これどこかで聞いたことあるなと思ったらグレーンウイスキーの品質向上とブレンデッドウイスキーの成功の話と根っこが一緒だった。連続式蒸留機すごい。ちなみにGinという名前の由来はジュニパーベリーのオランダでの読み方(Genever:イェネーファ、ジュネヴァ)が短縮されたものとのこと。

 

タンカレーラングプールについて

さて、タンカレーの現在のラインナップはスタンダードのロンドンドライジン、小型単式蒸留器で数回にわたり蒸留されたプレミアムクラスのNo.10、そしてラングプールの3つ。

今回飲んだラングプールはマンダリンオレンジとシトロンの交配種であるラングプールライムが配合されており、「ライムの心地よい刺激とマンダリンオレンジのジューシーさを兼ね備え」ていて、「トニックウォーターとライムのスライスと楽しむのが一番だ」そうです。要はジントニックがおすすめってことですね。ラングプールでブーストしてあるのにライムスライス入れろっていうことは、香り付けはマイルドなのでしょう。たぶん。

 

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水割りにレモンを絞って

で、今回は水割りレモン入りでサーブしていただいた。当然香りはレモン寄りだけど、飲んでみるとはっきりとしたジュニパーにコリアンダーやジンジャーっぽい要素も感じられた。甘味は微かだけれど確かにあってとても柔らかくて優しい分、水割りだとレモンを入れないとやや刺激に欠けるかもしれない。そんな味わい。

次はレモンなしで飲んでみたいなー。ライムの香りが付いているのでそのままジントニックもいいし、ジンジャーエールで割って生姜味際立たせてもおもしろいかも。

値段は1000mlの平行品で2500-2600円くらいがネット最安値の相場みたい。一本あったら長く楽しめそう。

 

ジンとタンカレーのちょっとした歴史もわかったし、ジンを飲むのがますます楽しくなった。